千里の道も一歩から
デパートの屋上でのひと時は、私をすこしだけ正気に戻してくれました。
外出するといつも、ごちゃごちゃ散らかった家に戻ってまた育児に追われることを想像するのが恐くて、家に帰るのが憂うつになったものですが、束の間ではあるものの自由でほっとする時間を手に入れた今は、すこし違う角度から家のこと、育児のことを考えることができました。
(しかし、抱っこ紐の心地がいまいちなのか赤子はもぞもぞして時々不快そうに「ぅあああ」と言葉を漏らす。泣き出すのも時間の問題のようだ)
片付け本とか、素敵なミニマリストの本とか貪り読みたい。
ああいうライフスタイル本、読むだけでテンション上がるし、幸せな気持ちになる。大好き。片付けできないくせに、すっきり系ライフスタイル本、大好き。物欲をこれでもかと刺激させるファッション誌と同じくらい大好き。
どうして相対するこの2ジャンルが、私は同じくらい好きなのだろう。
同じようなときめきを、確かに感じる。
正反対なようで、まさかの共通点でもあるのだろうか。
しかしながら私の家事レベルは、残念ながらそういう素敵な本を参照できるレベルにはおそらく到達していない。
どこから手をつけて良いのか分からない、と昨日の私は悩んでいた。
私は休息をパワーに変え、軽やかだった。
そんなの簡単じゃん。
一番目についてイライラするところに決まってるじゃん。
一番目についてイライラするところ?
あなた、育児大変だとか言いながら結構テレビ見てるじゃん。
テレビ台だよ。
黒いテレビ台には埃がたまって手垢だらけだし、下の棚には絵本ぐちゃぐちゃ突っ込んでるじゃん。気づいてないかもしれないけど、テレビ見るたびに視界に入って、ストレス感じてるんだよ。あなた。気分転換するためにテレビつけてるはずなのに、イライラの原因になっている。本末転倒だよ。
テレビ台まわりを、片付ければいいの?たったそれだけで変わるかな。
変わるよ。やってごらん。
うん。
まだ何か引っかかる?
いや、まずはテレビ台か。と。次はどこかな。なんだか…果てしないなと思って。
いけないね。片付けられない人ってのはこれだから。片付けられない人ってのはね、基本的にせっかちなんだよ。次のこと!次のこと!て先のことばかり勝手に考えて、なんだか壮大で大変そうだから、とりあえず辞めとくかって、勝手にふくらませるだけふくらませて諦める。いいかい、家っていうのはね、生き物なんだよ。ちょっとずつちょっとずつついた脂肪は、ちょっとずつちょっとずつ落としていくしかないんだよ。千里の道も一歩から。
わかりました。家に帰ったら、テレビ台を拭いてみます。
テレビ台拭いて棚の絵本をまとめるのなんて、ものの3分もかからないよ。子供が泣いてたってできるでしょ。
ストレスが高いと、それもできません。
まあそういうメンタルと片付けのコアな相関関係は、上級者向けだから。とりあえずそれは置いといて、いいからやってみようよ。
子供は、また一時保育利用してもいいと思いますか?
良いんじゃない?それであなたが休まるなら。シンプルに考えなよ。
私は、そうやってコントのように自問自答しながら、自分の考えをちょっとずつ整理することができました。