損な人生、いいじゃない
書店の平台をパトロールするのが好きです。大体、平台にはイケてる自己啓発本が何冊も、デカデカと置かれていますね。
ひとしきりパラパラめくってみるのですが、どんな本も、要するに
「どんだけ損しないで生きて行くか」
が、書かれているような気がします。
- 効率の良いマネジメント術で、時間を損しない
- モテる人間になって、異性関係で損しない
- いけてるコーディネートを身につけて、第一印象で損しない
- 感じの良い話し方を身につけて、対人関係で損しない
などなど。
私も、できれば損はしたくない。
でも、損をしないで生きて行くことは、とても大変。
だから、こういうハウツー本がめっちゃ売れるのでしょう。
自分は損ばかりの人生、とは全く思わないものの、ちっちゃい損、というかくじ運の悪さみたいなものは、人並みに感じたことはあります。
- 小学校で配られる新品のはずの定規が、なぜか自分のだけ中古品が入っていた。
- 可愛い衣装が着たくて、学生時代に某ネズミ系テーマパークのバイトに応募した→配属されたのは、ガソリンスタンドで着るようなツナギの衣装のとこだった
- メーカーに新卒入社、全国のどこへ赴任辞令が降りるか分からなくて、ちょっとドキドキ♫→場所は伏せますが、同期内で「一番避けたい」と囁かれていた赴任地に決定。その日の同期飲み会で、腫れ物に触る扱いを受けました
など。
振り返ると別に大したことないんですけど、当時はどれもショックでした。
赴任地の件は、同期のみんなに「かわいそう、あそこの赴任地なんて。。。」という哀れみの目で見られるのが、自分の気持ちより何より、辛かったです。
そんな落ち込みモードの飲み会で、別のシマから、
「何よ!私が何したっていうのよ!」
という怒声が。
私とは違う赴任地なのですが、同じく「あそこへ飛ばされるのはマジ勘弁」と言われていた赴任地に決まった、すごく気の強い女子が、酔っ払った勢いなのかキレまくっていたのです。
「私が、ブスだから、〇〇(地名)に飛ばされるのーーー?」
と最近話題の某女性議員のような威勢の良い声をあげていました。
待って、それじゃ、〇〇で働いている女性社員全員、冒涜してない??やばくない?
とドキドキしたのですが、彼女はそんなことはお構いなく、いかにこの辞令がおかしいかをまくしたてていました。新入社員なのに、すごい度胸です。
彼女は難関国立大の出身で、美人で(だから逆に『ブスだから』という皮肉のような言葉が出てきたのでしょう。いけてない赴任地に行くのはブスの役目(?)という認識があったのかと思います)、まさか、自分がその地に赴任するとは夢にも思っていなかったようでした。
紅潮するその顔から、仁王立ちのその姿全体から、
「私はゼーーーーッたい損するわけない損しない損しない損したくなーーーーい!」
という切なる叫びが発せられていました。
それを見て、私は
「『絶対に 損をしたくない』と思いながら生きるのって すごくしんどそうだな」
と思いました。
もっとちっちゃいことで言えば、例えば、ショッピングモールとかで、駐車券の時間が〜とかでゴネてインフォメーションのお姉さんを困らせて(?)いるおばさんとかいますが、数百円かそこらのお金を損したくないがために、誰かと戦う方が、私は疲れます。
もういいじゃん、損したまま終わろうよ。それくらい。と思ってしまいます。面倒くさくて。
私が、甘いんですかね。
その飲み会の後、私も、彼女も、それぞれの赴任地に旅立ちました。
結局、私はその土地の気候がどうしてもダメで、あっさりやめました。
損したのか何なのかよく分かりませんが、新卒入社という立場をほんの1年ちょっとで失うことになったから、損したのかな?
でも、遅かれ早かれ会社員は辞めたであろうから、関係ないのかも。
辞めた足で、私は東京に戻り、バイトしながら、ふわふわと数年を暮らしました。
リーマンショック前の、のどかな時代でした。ひとつの思い出になっています。
あの気の強かった彼女、今どうしてるかなあ、書いていて久々に気になりました。
きっと、今もパワフルに、どこかで頑張っている気がします。